金はどこで採れる?世界の鉱山と都市鉱山から学ぶ

背景が宇宙と金のコインで金はどこから来て、どこに行くのか?というテキストのアイキャッチ画像 金の経済

はじめに

金(ゴールド)――それは人類の歴史のなかで、常に特別な価値を持ってきた金属です。
見た目の美しさ、化学的な安定性、そして希少性。どれを取っても、他の金属とは一線を画します。

けれど、私たちの身の回りにあるその金は、いったいどこから来て、どのような旅を経て手元に届いているのでしょうか?

実は金という元素は、宇宙の中でもごく限られた極端な環境でしか生成されない、とても特別な存在です。
そうして太古の昔、宇宙空間に撒かれた金の粒子が、やがて地球に取り込まれ、今日の私たちの社会で流通する「金」となったのです。

本記事では、その金が

  • 地球上でどこから採れ、
  • どのように精錬・流通し、
  • さらには都市鉱山などでどのように再利用されているのか
    といった、「金の旅路」を地球スケールでたどっていきます。

1. 金はどこから来るのか? ~採掘の現場から見る金の起源~

1-1. 金は地球のどこに存在するのか?

金は、地球の地殻にとても少ない元素です。
平均すると1トンの岩の中に10ミリグラム程度しか含まれていません。

でも、そんな中でも「金がたくさん集まった場所(鉱床)」があります。
このような金の鉱床は、地質学ではいくつかのタイプに分けられています。


金が集まる鉱床のタイプ

鉱床の種類金が出やすい?どんな場所?
火成鉱床✕ 出にくいマグマからできた岩にあるが、金は少ない
熱水鉱床◎ とても多い地下の熱水が金を運んで、岩のすき間に沈殿する
┗ 鉱脈型岩の割れ目に金が帯状にたまる(例:南アフリカ)
┗ 斑岩型大きな銅鉱山に金が一緒に見つかる(例:チリ、アメリカ)
┗ 塊状熱水型◯ 時々ある主に銅・鉛・亜鉛だが、金を含むこともある
┗ スカルン型△ あまり多くない石灰岩の近くで見つかるタイプ。まれに金がある
漂砂鉱床◯ 歴史的に重要川に流された金が砂の中にたまったもの(例:アラスカ)
化石燃料鉱床✕ 出ない石炭や石油など。金とは関係なし

🔍 ポイントまとめ

  • 現代の大きな金鉱山 → 熱水鉱床(鉱脈型・斑岩型)
  • 昔の金採り(ゴールドラッシュなど)→ 漂砂鉱床

このように、金は「どこにでもある」わけではなく、特定の地質条件でしか集中していないのです。

1-2. 採掘現場の実情と金の含有量

平均的な金鉱石では、1トンあたり1〜5g程度の金が含まれています。
たとえば、結婚指輪1個分(約5g)の金を得るためには、1トンの鉱石を破砕・選鉱しなければならないのです。

一方で、極めて高品位な鉱床も存在します。

  • 鹿児島県の菱刈鉱山(住友金属鉱山)では、平均30〜40g/トンに達することもあり、世界最高水準とされています。
  • 南アフリカの一部地域では、100g/トンを超える鉱床も報告されています。

1-3. 世界の主要産金国

2024年時点で、世界全体で年間約3,600〜3,700トンの金が採掘されています。
主な産金国とその特徴は以下の通りです。

国名年間産出量(トン)特徴
中国380内モンゴルなど国家管理型の大規模鉱山
ロシア310露天掘り型鉱山が多く、広大な鉱床を保有
オーストラリア290政府系企業が主導する採掘体制
カナダ200環境規制を遵守しつつ効率的な採掘
米国160ネバダ州を中心に採掘、厳しい環境基準

1-4. 採掘から精錬までのプロセス

金を採掘して市場に流通させるまでには、以下の主要な工程があります。

  1. 採掘
    地下または露天掘りによって、金鉱石を採取。
  2. 破砕・粉砕・選鉱
    採掘された鉱石を細かく砕き、金が豊富に含まれる部分を濃縮する。
  3. 抽出・精錬
    一般的には「シアン化法」を用いて、金をシアン溶液に溶かし出し、電解や亜鉛還元で金属として析出。
    最終的に、純度99.99%の金に仕上げる。
  4. 鋳造(インゴット化)
    精錬された金をインゴット状に鋳造し、流通や保管のための形状に整える。

近年では、従来のシアン化法に代わり、低毒性の抽出法やバイオリーチングなど、環境負荷を軽減する技術の研究も進んでいます。バイオリーチングとは「生物浸出法」とも呼ばれ、微生物に鉱石中の金属成分を溶かし出す方法で、環境負荷、エネルギー効率などでメリットがあります。

2. 金のもうひとつの鉱山:リサイクル金(都市鉱山)

採掘によって得られる金は、地球深部からの貴重な資源ですが、現代社会では、使い終わった電子機器などに含まれる金も重要な資源となっています。
これを「都市鉱山(Urban Mining)」と呼びます。

2-1. 都市鉱山とは?

「都市鉱山」とは、廃棄された電子機器(スマートフォン、PC、デジカメ、プリンター基板など)から、レアメタルや貴金属を回収するプロセスを指します。
金は、電子部品や回路基板の接点に高い導電性を活かして使われているため、回収対象として非常に価値があるのです。

  • スマートフォン1トン(約1万台)からは、約300gもの金が回収できるとされています。
  • これにより、従来の採掘と比較して、金の濃度が格段に高い回収資源となります。

2-2. 世界と日本におけるリサイクル金の実態

金の供給のうち、リサイクルからの割合は約25〜30%を占めるとされています。
特に日本は、廃電子機器に含まれる金の総量が6,800トン超
と推定され、都市鉱山としての活用技術が世界トップクラスです。
また、2020年東京オリンピックのメダルにも、都市鉱山由来の金属が使用されるなど、その重要性が認識されています。

2-3. リサイクル金の意義とメリット

  • 持続可能性
    新たな鉱山開発は環境負荷が大きい一方、都市鉱山は既存の廃棄物から資源を回収するため、環境負荷が比較的低いです。
  • 資源安全保障
    鉱山資源が特定国に偏る中、都市鉱山はどの国にも存在する普遍的な資源となりえます。
  • 経済的効率性
    採掘よりも、回収・再精錬のコストが低く済む場合が多く、資源循環型社会の実現に寄与します。

2-4. 技術的側面

都市鉱山では、以下のようなプロセスで金が回収されます。

  • 破砕・分別
    廃棄電子機器を粉砕し、金属と非金属を分離する工程。
  • 溶解・精錬
    溶剤や電解法、場合によっては微生物を利用したバイオリーチングなどで、金を選択的に抽出する技術が研究・実用化されています。

これらの技術革新により、都市鉱山の効率は年々向上しており、金の持続可能な供給源として注目されています。

まとめ

金は、地球深部から採掘される希少な資源であると同時に、一度使われた後も都市鉱山として再び活用される「循環資源」でもあります。
採掘から精錬、そしてリサイクルへと続くプロセスは、現代の技術と環境配慮の両面から進化を続けています。

この流れを知ることで、金が単なる「投資対象」や「装飾品」ではなく、持続可能な資源管理や未来の資源安全保障に深く関わる存在であることを理解できるでしょう。

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